これから死ぬと分かっていたら、あなたはやはり、愛する人に言葉を残しますか?
第2次世界大戦では、6千万人もの人が命を失いました。
そんな人々の中に、これから死ぬと分かって手紙を残した人や、たまたま書いた手紙が最後となった人がいます。
これからご紹介する手紙を読めば、筆者の心や性格、歴史上最も過酷であった時代に彼らが優先したものや彼らの人生を垣間見ることができるかもしれません。
特攻前の思い
1945年5月11日、上原良司は特別攻撃隊の一員として沖縄戦で亡くなりました。
特攻前夜、彼は戦争に対する思いや戦争における彼の役割を手紙にしたためました。
その手紙は、感謝の言葉で始まっています。
“栄光ある祖国日本の代表的攻撃隊ともいうべき陸軍特別攻撃隊に選ばれ、身の光栄これに過ぐるものなきと痛感いたしております。”
しかし上原は、喜んでばかりいるような兵士ではありませんでした。
自国の情勢がどうなっているのか分からないほど、盲目ではなかったのです。
それでも、彼は自分の任務を遂行することに喜びを感じていて、彼の思いは自国とは相対するイデオロギーにとどまっていました。
“権力主義全体主義の国家は一時的に隆盛であろうとも必ずや最後には敗れる事は明白な事実です。
我々はその真理を今次世界大戦の枢軸国家において見る事ができると思います。
ファシズムのイタリアは如何、ナチズムのドイツまたすでに敗れ、今や権力主義国家は土台石の壊れた建築物のごとく、次から次へと滅亡しつつあります。
真理の普遍さは今現実によって証明されつつ過去において歴史が示したごとく未来永久に自由の偉大さを証明していくと思われます。”
神風パイロットの役割については、こう書き残しています。
“空の特攻隊のパイロットは一器械に過ぎぬと一友人がいった事も確かです。
操縦桿をとる器械、人格もなく感情もなくもちろん理性もなく、ただ敵の空母艦に向かって吸いつく磁石の中の鉄の一分子に過ぎぬものです。
理性をもって考えたなら実に考えられぬ事で、強いて考うれば彼らがいうごとく自殺者とでもいいましょうか。
精神の国、日本においてのみ見られる事だと思います。
一器械である吾人は何もいう権利はありませんが、ただ願わくば愛する日本を偉大ならしめられん事を国民の方々にお願いするのみです。”
上原はこう手紙を終えました。
“言いたい事を言いたいだけ言いました。
無礼をお許し下さい。
ではこの辺で”
大浦利弘の最後の日記
1943年6月、アメリカ軍はニュージョージア島の攻略作戦を開始しますが、その主な目的は大浦利弘が配属されていたムンダ空港の奪取でした。
大浦はその間、日記を書き続けていました。
6月22日、最後から2番目の日記に、こう書きました。
“体も顔も洗っていないし、歯はもうひと月も磨いていない。
上の前歯の1つは欠けていて、体は野犬のような匂いがする。
防空壕にいてただひとつ言えることは、まだ生きているということだ。
防空壕の前にあるドラム缶は穴だらけだ。
榴散弾の破片が背中に当たり、終わったと思ったが、不思議にも死者は出なかった。
我々はすべてを敵に開放している。
ああ、友軍よ!
我々を助けに来てくれ!
奴らに日本軍の力を見せてやれ。”
6月23日の最後の日記には、戦争の結果に対する苦痛や自分の死についての考えを顕にしています。
“戦闘状況をみれば、敗北以外に何もない。
軍からの援護なし。
敵軍の完全な協力と比べれば、子どもと大人の戦争のようである。
我々の砲兵の配置は、敵の戦車に崩された。
我々は囲まれ、侵略されようとしている。
結果的に、自分の現在の位置を守るしかない。
ラバウルにいる軍や大本営は何をしているのか。
空軍と戦艦はどこへ行ってしまったのか。
負けるしかないのか。
なぜ奴らは作戦を開始しないのか。
勝つために前向きに戦っているが、武器はない。
我々は敵の戦闘機、戦艦、中砲に備えて、ライフル銃と銃剣を持っている。
勝たねばならぬと言われるには、絶対な理由がありません。
もし敵と同じく、残された武器すべてを使って最後まで戦うべきであれば、私は喜んで降伏し、勝ち、負け、怪我を追い、殺されるだろう。
でもこのような戦争では我々は大人の手の中にある赤ん坊の首と同じで、死んでもそれは嫌な死に方だろう。
なんて悔しいんだ!
私の悔しい思いは、後ろの部隊に対する恨みであり、司令官に対する憎しみである。
後ろでは、国の利益のためだと思っている。
一言で言えば、現在の状況からして、これは敗北である。
しかし、日本の司令官は常に最後まで、空軍と海軍が動くと信じているのだ。”
彼は“またマラリアにかかっている兆候がある”というぶっきらぼうな言葉で、最後の日記を終えています。
日本の逃走兵や捕虜兵はごく僅かなため、大浦が生き残ったとは考えられません。
最後の日記の4日後には日本軍はこのエリアから撤退し、8月5日には飛行場がアメリカ軍に奪取されました。
次ページに続く
意図的な物を感じる選出。
「枢軸国は悪」という編纂者の思想が透けて見える。
『きけわだつみのこえ』と似た臭いがする。
上原良司は全体主義の暴走を鋭く批判し戦後左翼に利用されちゃった方。
彼を出すなら右翼から愛されてる黒木博司などの遺書も紹介すべきだろう。
公平性を無視した選出にこの編纂者の思想的限界を感じる。